恵比寿 会計士事務所   恵比寿にある久都内公認会計士事務所        
           
       
     
     



                     税法改正資料(2022 年版)
                                            2022 年 8 月


   税法改正に関しては本格的開始時期が迫ってきましたインボイス制度と改正電子帳簿保存法について記載させ
   ていただきました。

    記載内容は以下の様になります。
  [1]インボイス制度
  [2]改正電子帳簿保存法
  [3]その他最近の税法改正

 

  [1] インボイス制度


  (1) インボイス制度とは

   インボイス制度とは事業者の消費税申告計算における「仕入税額控除」の適用要件に関する制度です。
    インボイス制度導入後は、適用税率や消費税額が記載されたインボイスの保存を仕入税額控除の適用
   要件とするとともに、インボイスを交付できる事業者を登録制とし、売上側にも交付義務を課すとして
   います。従って、交付を受けた請求書等がインボイスでない場合には、全額仕入税額控除ができないこ
   とになります。
    開始は令和 5 年(2023 年)10 月 1 日です。

  (2) どの様な準備が必要か

   ① 令和 5 年 10 月 1 日からインボイス発行事業者として登録を受けるためには、令和 5 年 3 月 31 日まで
    に登録申請手続きを行う必要があります。

   ② 継続的な取引相手の場合、制度が始まる前に相手が登録するかどうか日々の業務の中で確認し、取引先
    と連携して準備を進めていくことが大事です。
    ただし支払先の年間の売上高が 1,000 万円を超える事業者である場合はほぼ確認の必要はないと思
    います。又継続的に取引先に年間 1,000 万円以上を支払っている場合も登録するかどうかの確認はほ
    とんど必要ないと思います。

   ③ インボイス発行事業者として登録するかどうかは任意で、課税事業者であっても必ずしも登録する必要
    はありません。売上先がすべて一般消費者や簡易課税選択者だけの場合登録する必要はないかもしれま
    せん。

   ④ 免税事業者(売上高が年間 1,000 万円未満)の場合売上先の事業者との話し合いで登録するかどうか検
    討することになります。登録することは課税事業者となり消費税の申告納税が必要となります。

   ⑤ 口座振替、口座振込で請求書が発行されていない場合、登録番号等インボイス必要記載事項を記載した
     契約書を作成するか又は契約書で不足している登録番号等必要記載事項は別途通知をする形とするか等
     打合せをする必要があります。

  (3) インボイスの必要記載事項

   ① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

   ② 取引年月日

   ③ 取引内容(軽減税率の対象品目の場合はその旨)

   ④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

   ⑤ 税率ごとに区分した消費税額等

   ⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 
  (注)現状 10%の取引しかない場合、税率 10%と記載していない請求書や領収証も多いと思われますが、
     インボイス制度導入後は 10%と明記する必要があります。

  (4) 適格簡易請求書

   ① 次の業種は簡易的なインボイス発行が認められています。
    a.小売業
    b.飲食業
    c.写真業
    d.旅行業
    e.タクシー業
    f.駐車場業(不特定多数に対して駐車場を提供するものに限る)
    g.上記に準ずる事業で不特定多数に資産の譲渡を行う事業

   ② 簡易的なインボイスの記載事項
    a.適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
    b.取引年月日
    c.取引内容(軽減税率の対象品目の場合はその旨)
    d.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
    e.税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

  (5) インボイスの交付義務が免除される事業

   ① 運賃 3 万円未満(税込)の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運賃

   ② 出荷者等が卸売市場において卸売業者を通じて行う生鮮食料品等のせり売等による販売

   ③ 生産者が卸売市場において農業協同組合等を通じて行う農林水産物のせり売等による販売(無条件委託
    方式かつ共同計算方式で生産者を特定しないものに限る)

   ④ 自動販売機及び自動サービス機による商品の販売等のうち 3 万円未満(税込)のもの

   ⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便等(郵便ポストに差し出されたものに限る)
  
   なお取引が免税取引、非課税取引及び不課税取引のみである場合は、適格請求書の交付義務は生じない。

  (6) 帳簿の記載事項

    インボイス制度における帳簿の記載事項は次の通りですが、インボイス制度導入前との違いは③の軽減税
    率取引の内容を記載する点と思われます。

   ① 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
 
   ② 課税仕入れを行った年月日

   ③ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るも
    のである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)

   ④ 課税仕入れに係る支払対価の額


  (7) 出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等
    従業員の方は事業者ではない、つまりインボイス発行事業者ではないので仕入税額控除の適用ができない
    のではないかという疑問もあるかと思います。
    しかし旅行及び通勤に通常必要と認められる部分の金額については課税仕入れに係る支払対価の額に該当
    するものとして取り扱われます。
     この金額については一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
    なお通勤手当については所得税における非課税とされる通勤手当の金額を超えているかどうかは問いません。
 
  (8) 立替金
    取引先A社が別会社B社に経費を立て替えて支払った場合、B社からA社宛てに発行された適格請求書を
    当社が受領したとしても、これをもって仕入税額控除をすることはできません。
     この場合は立替払を行ったA社から立替金精算書等の交付を受けることで、その適格請求書及び立替金
    精算書等の書類の保存をもって仕入税額控除ができます。

  (9) 免税事業者からの仕入れに係る経過措置
    免税事業者(インボイス発行事業者以外の事業者)への支払いについては、インボイス制度導入後ただち
    に仕入税額控除の適用ができなくなるのではなく、段階的に税額控除額が縮小していく経過措置が設けら
    れています。

   ① インボイス発行事業者以外の事業者からの仕入れについて仕入税額控除を適用できる割合
期間 割合
  令和 5 年 10 月 1 日から令和 8 年 9 月 30 日まで
  令和 8 年 10 月 1 日から令和 11 年 9 月 30 日まで
  令和 11 年 10 月 1 日以降
80%
50%
0%

   ② この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、次の 2 点を記載した帳簿及び請求書等の保存が
    必要です。
     a.免税事業者(インボイス発行事業者以外の事業者)から受領する区分記載請求書等(注)と同様の
       事項が記載された請求書等
     b.この経過措置の適用を受ける旨(80%控除、50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載
       した帳簿

      (注)区分記載請求書等の記載事項
      ・書類の作成者の氏名又は名称
      ・課税資産の譲渡等を行った年月日
      ・課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場
       合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
      ・税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
       →「課税資産の譲渡等の税抜価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「税率ごとに区分した
       消費税額等」を記載して差し支えありません。
      ・書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

   ③ 80%割合の際の仕入側の会計処理は次の様になります。
    (例)税抜価額 20 万円、消費税率 10%のケース
(借)仕入 204,000   (貸)現金 220,000
   仮払消費税 16,000  
又は 
(借)仕入 200,000   (貸)現金 220,000
   仮払消費税 20,000  
(借)仕入 4,000   (貸)仮払消費税 4,000

  (10) 免税事業者が申請書を提出する場合の留意点
    免税事業者がインボイス発行事業者となるためには原則として課税事業者選択届出書を提出し、課税事業
    者となることを前提に登録申請をする必要がありますが、令和 11 年 9 月 30 日まで経過措置の適用があ
    り、課税事業者選択届出書の提出を行うことなく登録申請書の提出のみで登録を受けることができます。
    具体的な手続きとしては、登録申請書の次葉の「免税事業者の確認」の欄に経過措置の適用を受けるか
    どうかの選択欄があり、チェックボックスに✓印を付すことで適用可能となります。

  (11) 適格返還請求書
    インボイス発行事業者は、返品や値引き等の売上げに係る対価の返還を行う場合、その対価の返還を受け
    る課税事業者に対して適格返還請求書を交付し、その写しを保存する必要があります。
    なおインボイスの交付義務が免除されている場合は適格返還請求書の交付義務も同様に免除されます。
    適格返還請求書の記載事項は次の通りです。

   ① インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

   ② 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及び売上げに係る対価の返還等の原因となる課税資産の譲渡等
     を行った年月日

   ③ 売上げに係る対価の返還等の原因となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減対象課税資
    産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)

   ④ 売上げに係る対価の返還等に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分した金額

   ⑤ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

  (12) インボイスの交付・保存義務
    インボイス発行事業者は、取引の相手方である課税事業者から求められた場合、インボイスを交付し、そ
    の写しを保存する必要があります。
    保存期間は、交付した日の属する課税期間末日の翌日から 2 ヵ月を経過した日から 7 年間です。

  (13) 振込手数料を売手負担とするケース
    例えば、銀行の窓口で X 社(買手:A 銀行)から Y 社(売手:B 銀行)への振込をする場合に、X 社と Y
    社の相対の契約により、X 社は手数料を差し引いた金額を振り込むケース(実質的に振込手数料を Y 社が
    負担するケース)を想定します。
    インボイスは、取引の相手方に対して交付するものであるため、その役務提供の相手方が振込側である
   X 社ということであれば、A 銀行は X 社にインボイスを交付することになります。



  その上で、売主負担の手数料につき売手が仕入税額控除を行うには、主に次の①②③のいずれかの方法をとるこ
  とが考えられます。

   ① 売上に係る対価の返還等として処理する
    売手(Y 社)は振込手数料相当額の売上値引きを行ったとして処理することになり、売手が買手(X 社)
    に対して返還インボイスを交付する必要があります。返還インボイスには、「売上に係る対価の返還等
    の基となる課税資産の譲渡等の内容」、「売上に係る対価の返還等の金額(=振込手数料相当額)」、
    「消費税額」等を記載することになります。

   ② 買手からの役務提供と整理し、仕入明細書対応を行う
    継続して取引のある買手が振込手数料を差し引いてきた場合、例えば次回の請求に当たり、手数料相
    当額の役務、つまり振込により決済を受けるという役務提供を受けたとして、買手に対して仕入明細
    書を交付し、売手が仕入税額控除を受けます。この場合、買手がインボイス発行事業者であり、かつ、
     その仕入明細書につき買手の確認を受ける必要があります。
    すなわち売手が買手に仕入明細書を交付し、買手の確認を受けます。

   ③ 買手が振込手数料を立替払したとして処理する
    買手が、本来売手が負担すべき振込手数料を立替払したと整理します。売手は、買手が銀行から受領
    した振込手数料に係るインボイスと立替金精算書を買手から受領し保存することで、仕入税額控除を
    受けられます。この場合、買手が差し引く金額は振込手数料に係るインボイスに記載された金額とな
    ります。なお、買手が売手に交付するインボイスが大量となるなどの理由で交付困難な場合は、立替
    金精算書の保存をもって売手が仕入税額控除を受けられるなどとされています。
     なお買手が ATM を利用して振込を行った場合、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となります。
    そのため、ATM の手数料について売手が仕入税額控除を行う場合には、立替金精算書の保存が不要
    となります。この場合、売手は「買手が差し引いた金額が振込手数料であること」、及び「立替での支
    払が ATM での振込によるもの」を確認した上で、「帳簿のみ保存の特例」の適用を受けることになり
    ます。

  (14) インボイスの修正
    買手が入手したインボイスの誤りに気付いた場合
    原則は売手にインボイスを修正してもらう方法ですが、「仕入明細書」という方式で書類のやり取りを行っ
    ている場合は、買手が正しい内容を記載した「仕入明細書」を作成して売手の確認がとれた場合には買手は
    仕入税額控除ができます。
    又「ここが間違っていますので内容確認してください」という書類などを作成して、売手に確認を求める
    ことも可能です。

  (15) 免税事業者が簡易課税制度を選択するケース
    登録日の属する課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から
    簡易課税制度の適用を受けることができます。

  (16) 新設法人等の登録時期の特例
    免税事業者である新設法人の場合、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに課税選択届出書を提出
    すれば、課税期間の初日から課税事業者となることができます。
    インボイス発行事業者になるためには登録申請書の提出も必要です。
     課税事業者である新設法人は課税期間の末日までに登録申請書を提出すればインボイス発行事業者とな
    ります。
     なお個人事業者が法人を設立して事業を開始する場合は、新設法人としての手続に加えて、個人事業者と
    しての廃業の手続(「事業廃止届出書」の提出)が必要となります。

  (17) インボイスに記載する消費税額等の端数処理
    インボイスの記載事項である消費税額等に 1 円未満の端数が生じる場合は、税率ごとに 1 回の端数処理を行
    う必要があります。
    しかし個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1 円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等とし
    て記載することは認められません。
    なお切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができます。

  (18) 商品ごとに税抜価額と税込価額が混在する場合
    いずれかに統一する必要があります。

  (19) 割戻し計算と積上げ計算
    インボイスにおける売上税額の計算方法には、割戻し計算と積上げ計算の 2 つの方法が認められています。
    取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど、割戻し計算と積上げ計算の併用も認められて
    います。

   ① 割戻し計算(原則的な方法)のイメージ
    税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額の合計額に 100/110(軽減税率の場合
    は 100/108)を乗じて計算した税率ごとの課税標準額に 7.8%(軽減税率の場合は 6.24%)を乗じて
    売上税額を算定します。

    a.軽減税率の対象となる売上税額
    軽減税率の対象となる課税売上(税込み) × 100/108 = 軽減税率の対象となる課税標準額

    軽減税率の対象となる課税標準額 × 6.24% = 軽減税率の対象となる売上税額

    b.標準税率の対象となる売上税額
    標準税率の対象となる課税売上げ(税込み) × 100/110 = 標準税率の対象となる課税標準額

    標準税率の対象となる課税標準額 × 7.8% = 標準税率の対象となる売上税額

    c.売上税額の合計額
    標準税率の対象となる売上税額 + 標準税率の対象となる売上税額 = 売上税額の合計額

   ② 積上げ計算のイメージ
    交付したインボイスに記載した「税率ごとの消費税額等」の合計額に 78/100 を乗じて売上税額を計算
    する方法。
    インボイスに記載した消費税額の合計額 × 78/100 = 売上税額の合計額
    なお、売上税額を積上げ計算した場合(併用している場合も含む)仕入税額も積上げ計算しなければな
    りません。
     又インボイスに適用税率のみを記載して交付している場合は「税率ごとの消費税等」の記載がない為
    積上げ計算を行うことはできません。

  (20) 令和 5 年 10 月 1 日以後の相続
   ① 被相続人が登録している場合の効力
    相続人は「インボイス発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があり、届出書の提出日の翌日又は
    死亡した日の翌日から 4 ヵ月を経過した日のいずれか早い日に被相続人の登録効力が失われます。
   ② 相続人の登録申請書の提出
    相続により事業を承継した相続人が、インボイス発行事業者の登録を受けるためには、相続人は登録
    申請書の提出が必要となります。
   ③ 相続の翌日から相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日又は相続の翌日から 4 ヵ月を経
    過する日のいずれか早い日までの期間については、相続人をインボイス発行事業者とみなす措置が設け
    られておりこの場合、被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなすこととされています。
   ④ 登録申請書の提出から登録通知を受けるまでには、その審査等に一定の期間を要しますので相続により
    事業を承継した相続人がインボイス発行事業者の登録を受ける場合には、早めに登録申請書を提出する
    必要があります。
    ⇒相続の翌日から 4 ヵ月を経過した日までに登録通知を受ける必要がある点に注意してください。

  (21) 銀行取引のインボイス対応
   ① 窓口や ATM、インターネットバンキングの振込等の手数料について
    振込等に係る手数料は消費税の課税対象となり、窓口やインターネットバンキングの振込手数料には
    インボイスの交付義務が生じます。従って事業者が仕入税額控除するためにはその手数料に係る
    インボイスの保存が必要となります。ただし 3 万円未満の ATM の振込手数料については一定事項(ATM
    を利用した取引である旨及び相手方の住所等)を記載した帳簿の保存で仕入税額控除を受けられます。
   ② 両替機の手数料について
    銀行の場合、ATM のほか両替機も自動販売機サービスに当たり、手数料が 3 万円未満であれば帳簿
    の保存で仕入税額控除が受けられ、インボイスの交付・保存義務は生じません。
   ③ 帳簿に ATM や両替機の設置場所の住所を記載
    ATM 等を利用し手数料を支払った場合、利用した ATM 等の設置場所の住所を帳簿に記載します。
    支店名の記載は不要で、住所は市区町村名等の記載でよいとのことで、番地の記載までは不要です。

                       帳簿への記載例
月日 摘要 税区分 借方
6 月 1 日  振込手数料
 (××銀行 ATM○○市●●町)
 ※「帳簿のみ保存の特例」適用
10% 440


   ④ 手数料の一括引落しの場合年月日はそれぞれ記載必要か
    インボイスに記載する取引年月日は課税期間の範囲内で一定の期間をまとめて記載することも可能で
    す。従って事業者は銀行から毎月受け取るインボイスを保存することで、毎月の振込に係る手数料に
    つき仕入税額控除を受けられます。

   ⑤ 振込依頼書の複写もインボイスとして保存可能
    インボイスの要件を満たす記載があれば振込依頼書の複写についても、振込手数料のインボイスとし
    て認められます。

   ⑥ 「私製振込依頼書」を用いた場合
    「私製振込依頼書」とは、振込を依頼する個々の企業が独自に作成した振込依頼書の様式です。
    これを用いた振込に係る手数料において、これを仕入明細書として仕入税額控除を行う対応が想定さ
    れます。この依頼書に、個々の企業においてインボイスに必要な事項を記載した上で、銀行がその内
    容を確認することになるでしょう。例えば、銀行に押印を求めることなどが想定されます。

   ⑦ 家賃に係る取引証明書類について
    家賃の口座振替等で請求書や領収書の交付を受けていないケースの場合、賃貸借契約書に加え「実際
    に取引を行った事実を客観的に示す書類」を併せて保存することで、家賃に係る仕入税額控除を受け
    られるとされていますが、この「実際に取引を行った事実を客観的に示す書類」としては、通帳や振
    込金受取書の他インターネットバンキングを利用している場合はその振込等の画面をコピーしたものや、
    明細を CSV ファイル等にダウンロードしたものが該当します。

   ⑧ インターネットバンキングの振込等に係る手数料について
    インターネットバンキングは自動サービス機に該当しませんので、利用者は交付されたインボイスを
    保存することでその振込手数料につき仕入税額控除を適用することができます。
    この場合、銀行は利用者の求めに応じて、インボイスとして必要な記載事項を満たした請求書、領収
    書等を交付する義務があります。
    どのようなインボイスを交付するのかは、銀行によって、その対応が異なると思いますが、例えば
    振込をした際に表示される振込画面において、インボイスに必要な記載事項を表示することで電子イ
    ンボイスとして交付し、画面をダウンロードないしコピー等して利用者が保存することが考えられます。
    又インターネットバンキングの利用に係る契約書に取引年月日以外の必要な記載事項が全て記載さ
    れていれば、実際に取引を行った事実を客観的に示す取引年月日の記載がある書類との組合せにより、
    インボイスの記載事項を満たすことが可能と考えられます。一方、必要な記載事項に不足がある場合には、
    銀行は利用者に別途通知するなどの対応が必要となります。
     なお単に銀行のウェブサイト上に手数料等の金額の情報を載せているだけでは、他の書類との相互
    関連性が明確であるとは言えず、インボイスとしての記載事項を満たすことはできないようです。
     例えば、インターネットバンキングの契約者専用ページにおいて、その個別の契約に紐づいた利用料や
    手数料等の情報が記載されているような場合には、当該契約書との相互関連性が明確と考えられます。

  (22 ) 高速道路料金のインボイス対応  

   ① 料金所で料金を支払うケース(現金やクレジットカードで支払)
    料金所において、適格簡易請求書として「領収書」や「利用証明書」をインボイスとして交付するの
    でそれを保存

   ② ETC クレジットカード等(クレジットカード会社等発行)のケース
    WEB 上の「ETC 利用照会サービス」において、「利用証明書」(PDF)を電子適格簡易請求書として
    インボイスを交付するので「利用証明書」を電子データ保存又は出力し紙保存します。(但し電子帳簿
    保存法本格的開始後は電子データ保存は必要です。)

   ③ ETC パーソナルカード(ETC パーソナルカード事務局が発行)のケース
    事務局から適格請求書として請求書を送付されるので、それを保存しておくことで仕入税額控除が受け
    られます。

   ④ ETC コーポレートカード(NEXCO 東日本、中日本、西日本 3 社が発行)のケース
    NEXCO 等の利用した高速道路の会社から適格請求書として請求書が送付されるので、それを保存し
    ておくことで仕入税額控除が受けられます。

   ⑤ 「ETC 利用履歴発行プリンター」で交付される「利用明細書」はインボイスの対象外となります。
    これは確定前の金額で割引等により後日変更される可能性があるためです。
    又 ETC カードを利用し料金所において「利用証明書」も割引等による確定前の金額が記載される仕組
    みのため、適格請求書等の対象とはなりません。


 

  [2] 改正電子帳簿保存法


    改正電子帳簿保存法は 2022 年 1 月から施行されていますが、実務上全ての事業者が対応することは無
    理があるため 2 年間の猶予措置が設けられることになりました。
    しかし 2024 年 1 月からの本格的開始時期が迫ってきましたので、準備していく必要があります。
    そこでその内容について記載します。

  (1) 改正電子帳簿保存法の概要

   ① 電子データで受け取った書類は電子データのまま保存する。

   ② 紙で受け取る書類は、従来通り紙のまま保存する。
    ただし一定の要件を満たせばスキャンして電子データとして保存することも認められます。

  (2) 自社で作成する書類の電子保存に関するポイント

   ① 税務調査の際にデータ保存した書類のダウンロードの求めに応じれば、書類の検索機能は必要なくなり
     ます。

   ② 国税庁のサイトにあるサンプルを参考に自社の状況に合わせて事務処理規程を適切に作成すれば良いで
    す。

   ③ 保存した電子帳簿の内容を、すぐにディスプレイで表示したり、プリンタで出力したりできる状態にし
    ておくことが必要です。

  (3) 取引先が作成した書類の電子保存に関するポイント

   ① 取引先が作成した電子データは電子データのまま保存することが義務付けられました。

   ② 取引先が作成した電子データの書類を保存するための要件として「検索機能」と「タイムスタンプ」へ
    の対応です。

   ③ 「検索機能」と「タイムスタンプ」はコストや人員の確保などの観点から実現が難しいため、具体的に
    は「索引簿の作成」と「事務処理規程の作成・備付け」が最もクリアしやすい方法です。

  (4) 税務調査対応はどの様に変わるのか
    税務調査で見られるのは次の様な点で、どの様なシステムを使っていたとしても、それが実現できて
    いれば問題はありません。

   ① 取引が正確に帳簿に反映されていること。

   ② 取引の根拠になる書類が適切に保存され信頼性が確保されていること。
    改正により電子データ保存の要件が緩和された関係で、電子データの信頼性に対する調査には力を入れてくるこ
    とが考えられます。
    従って新たに電子データ保存を行なう場合は、改正されたルールに準拠するように業務フローや業務規程を整
    備して、それに従って業務を行なうことを徹底すると良いでしょう。
    業務フローが曖昧だったり実際の業務が規程から外れていたりすると、電子データに対する信頼性に疑問を持
    たれてしまう可能性があります。
    そのようなことがないように、導入時から明確な業務フローを整備し、それに従って業務を進めると良いと思
    います。

  (5) 優良な電子帳簿

   ① 「優良な電子帳簿」を作成している場合は申告ミスがあった際課される過少申告加算税の 10%が 5%に
    軽減されます。

   ② 所轄税務署長に届出書を事前に提出する必要があります。

   ③ 次の 5 つの要件を満たす必要があります。
     a.次の要件を満たすソフトを使用すること。
       ・帳簿記録の訂正、削除を行なった場合には、その事実と内容を確認できる。
       ・通常その処理に必要と考えられる期間を超えて処理を行なった場合、その事実を確認できる。
     b.帳簿間の関連性が確保されている。
        例えば仕訳帳の売上の記録と売上帳の記録が一致している等
     c.システム概要書等使用するソフトに関する書類等を備え付けること。
     d.保存した電子帳簿の内容を、すぐにディスプレイで表示したりプリンタで出力したりできる状態に
       しておくこと。
     e.検索機能について 3 つの要件を満たすこと。
       ・日付、金額、取引先で検索できる。
       ・日付、金額の範囲を指定して検索できる。
       ・2 つ以上の項目を指定して検索できる。

  (6) 事務処理規程のサンプルの内容は次の通りです。


              電子データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

                         第1章 総則
   (目的)
  第1条  この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第 7 条
       に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を履行するため、○○において行った
       電子取引の取引情報に係る電磁的記録を適正に保存するために必要な事項を定め、これに基づき保存
       することを目的とする。
   (適用範囲)
  第2条  この規程は、○○の全ての役員及び従業員(契約社員、パートタイマー及び派遣社員を含む。以下同
       じ。)に対して適用する。
  (管理責任者)
  第3条  この規程の管理責任者は●●とする。 
  
                 第 2 章 電子取引データの取扱い
   (電子取引の範囲)
  第4条  当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。
    一  EDI取引
    二  電子メールを利用した請求書等の授受
    三  ■■(クラウドサービス)を利用した請求書等の授受
    四 ・・・・・・
   (取引データの保存)
  第5条 取引先から受領した取引関係情報及び取引相手に提供した取引関係情報のうち、第 6 条に定めるデー
      タについては、保存サーバ内に△△年間保存する。
 (対象となるデータ)
  第6条  保存する取引関係情報は以下の通りとする。
    一 見積依頼情報
    二 見積回答情報
    三 確定注文情報
    四 注文請け情報
    五 納品情報
    六 支払情報
    七 ▲▲
  (運用体制)
  第7条 保存する取引関係情報の管理責任者及び処理責任者は以下の通りとする。
    一 管理責任者○○部△△課 課長××××
    二 処理責任者○○部△△課 係長××××
  (訂正削除の原則禁止)
  第8条 保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。
  (訂正削除を行う場合)
  第9条 業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正又は削除する場合は、処理責任者
  は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。
    一 申請日
    二 取引伝票番号
    三 取引件名
    四 取引先名
    五 訂正・削除日付
    六 訂正・削除内容
    七 訂正・削除理由
    八 処理担当者名
  2.管理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ
    承認する。
  3.管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示す
    る。
  4.処理責任者は、取引関係情報の訂正及び削除を行った場合は、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある
    旨の情報を付すとともに「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し、当該報告書を管理責任者に提出する。
  5.「取引情報訂正・削除申請書」及び「取引情報訂正・削除完了報告書」は、事後に訂正・削除履歴の確認作
    業が行えるよう整然とした形で、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。

                     附則
   (施行)
  第10条 この規程は、令和〇年○月○日から施行する。


  (7) 保存対象は次の通りです。
      取引先等とデータでやりとりしたもののうち、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文
      書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)が
      含まれるデータについては、全て要件に従ってデータのまま保存していただく必要があります。
  
  (8) 電子取引の分類別一覧
   自社の業務においてどの様なものが電子取引に該当するか整理する参考です。
分類 概要 対象業務例 システム・サービス例
EDI 取引  異なる組織間で取引の
 ためのメッセージを通信
 回線を介して標準的な
 規約を用いて、コンピュ
 ータ間で交換する取引
 ・調達や購買に関する見積~発注~
  納品~検収~請求~支払の一連業務
 ・EDI システム
 ・WEB-EDI システム
 ・サプライチェーンマ
  ネージメントシステム
 ・金融機関との取引業務(入金・振
  込・取引情報)
 ・ネットバンキングシ
  ステム
 ・全銀 EDI システム
 ・API を利用したシス
  テム連携
 ・Fintech サービス
 電子メールに
 よる取引情報
 の授受
 電子メールを利用した
 各種取引
 ・調達購買に関する見積~発注~納
  品~検収~請求~支払の一連業務
 ・契約やその他取引
 ・メールソフト
 ・ファイル転送サービス
 インターネット
 等による取引
 インターネット等を利用
 した各種取引
 ・経費の立替精算業務(精算書の
  電子化)
 ・経費精算システム
 ・契約業務  ・電子契約
 ・請求書配信業務  ・請求書WEB配信シス
  テム
 ・レシートの電子化(電子レシート)  ・電子レシートアプリ
 インターネット上のサイ
 トを利用した各種取引
 ・物品の購入(経費・仕入)   ・ECサイト(WEBサイ
  ト・スマホアプリ
 ・鉄道/航空・宿泊代の支払(出張・
  移動の交通費等)
 その他  ・FAX(注)
  (電話回線・インターネット)
 ・FAX サーバ
 ・FAX ソフト
  ・タブレットによる電子申込
 ・電子申込システム

 (注)紙に出力せず、電子画像で保存する場合を指します。

 電子取引を上手に活用することで業務の効率化につなげるためにも、業務プロセスの見直しの機会としていた
 だければと思います。



 

  [3]その他最近の税法改正


  (1) 賃上げ促進税制(中小企業向け賃上げ促進税制)

   ① 要件
     a.国内雇用者に対して給与等を支給すること
     b.雇用者給与等支給増加割合が 1.5%以上であること
   雇用者給与等支給増加割合=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)/比較雇用者給与等支給額

   ② 税額控除(法人税額の 20%が限度)
     a.原則:控除対象雇用者給与等支給増加額の 15%
      (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15%
     b.特例
     ア.特例1 雇用者給与等支給増加割合が 2.5%以上である場合には、控除率を 15%上乗せ
         要件:雇用者給与等支給増加割合≧2.5%
         税額控除:(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×30%
     イ.特例2 教育訓練費増加の要件を満たす場合には、控除率を 10%上乗せ
         要件:(当期の教育訓練費-前期の教育訓練費)/前期の教育訓練費≧10%
         税額控除:(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×25%
   ※特例1及び特例 2 の要件の全てを満たす場合には、控除率が 25%上乗せ(控除率が 40%)となります。

   ③ 適用期間
     平成 30 年 4 月 1 日から令和 6 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度

  (2) 人材確保促進税制
      青色申告書を提出する法人が次の適用要件を満たして国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合
      に、一定の税額控除が認められます。
        令和 3 年 4 月 1 日以後開始事業年度に適用されます。

   ① 要件a.bをクリアーする必要があります。
     a.雇用者給与等支給額>比較雇用者給与等支給額
     b.新規雇用者給与等支給額-新規雇用者比較給与等支給額/新規雇用者比較給与等支給額≧2%

   ② 税額控除限度額
     控除対象新規雇用者給与等支給額×税額控除率 15%

   ③ 税額控除率の 5%上乗せ要件
     教育訓練費-比較教育訓練費(前期の教育訓練費)/比較教育訓練費(前期の教育訓練費)≧20%

   ④ 控除上限
     法人税額の 20%

   ⑤ 入社から 1 年以内が計算対象の例示


    ⑥ 賃上げ促進税制と人材確保等促進税制の両方の税額控除はできませんので、どちらか有利な方を選択す
      ることになります。

  (3) 上場株式等の配当所得と譲渡所得について住民税と所得税で課税方式一致
     現在は、例えば配当所得について所得税で「総合課税」を選択し配当控除の適用を受け、住民税で
     「申告不要」を選択し国民健康保険料等の圧縮などが可能ですが、改正後はこの組合わせができなく
     なります。令和 6 年度の住民税(令和 5 年分の配当所得・譲渡所得)から適用されます。
      従って上場株式等の配当所得について所得税で「申告分離課税」を適用した場合は、住民税におい
     ても「申告分離課税」が適用されます。又所得税で「申告不要」を選択し所得税の確定申告をしない
     場合は、住民税においても「申告不要」が自動的に適用されます。現在のように住民税の申告書等の
     提出によって住民税の課税方式を変更することができなくなります。
     なお、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件についても、所得税と住民税
     で一致させる改正がなされています。

  (4) 住宅取得資金贈与特例の改正
     直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に一定額まで贈与税が非課税となる特例について、
     令和 4 年度改正により、非課税限度の見直し等が行われました。
      省エネ等住宅を取得する場合、令和 4 年 1 月 1 日から令和 5 年 12 月 31 日までの間に贈与を受けた
     住宅取得等資金については、住宅の契約締結日や消費税率によらず、非課税限度額は一律で 1,000 万
     円で、それ以外の住宅の場合は 500 万円となります。
      対象となる省エネ等住宅は、「エネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋、地震に対す
     る安全性に係る基準に適合する住宅用の家屋又は高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造
     及び設備の基準に適合する住宅用の家屋」として、住宅性能表示基準や評価方法基準の一定以上の等
     級を満たすものとされています。

  (5) 少額資産特例の改正
     令和 4 年度税制改正では、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度を含む 3 つの制度(※)の
     対象資産の範囲が見直されました。
      具体的には、令和 4 年 4 月 1 日以後に取得等する「貸付けの用に供した資産」については、各制度
     の適用対象外とされました。ただし、適用対象外となる「貸付け」の範囲から「主要な事業として行
     われる貸付け」が除かれています。
      (※)3 つの制度
     ① 取得価額 10 万円未満の減価償却資産を取得し事業に供した場合損金算入する制度
     ② 10 万円以上 20 万円未満の減価償却資産について取得し事業に供した場合に 3 年で損金算入する制度
     ③ 中小企業者等(資本金 1 億円以下の一定の法人、農業協同組合等)が、取得価額 30 万円未満の減価
       償却資産を取得し事業に供した場合に 300 万円を限度に損金算入する制度

  (6) 財産債務調書制度の見直し
     ① 改正点は次の通りです。
項目 改正前 改正後
 提出義務者  以下のいずれにも該当する者
 ・確定申告書を提出する必要がある者又は一定の
  還付申告書を提出する者
 ・所得の合計額が 2,000 万円超
 ・財産の価額の合計額が 3 億円以上又は
  国外転出特例対象財産
  の価額の合計額が 1 億円以上
 以下のどちらかに該当する者
 ・改正前(左記)の要件に該当する者
 ・財産の価額の合計額が 10 億円以上
 提出期限  翌年 3 月 16 日  翌年 6 月 30 日
 記載事項  取得価額100万円未満の家庭用財産は記載を要しない。  取得価額 300 万円未満の家庭用財産は
 記載を要しない
 期限後に提出
 された場合の
 宥恕規定
 調査があったことにより更正又は決定があるべき
 ことを予知してされたものでないときは、提出期限
 内に提出されたものとみなして過少申告加算税等の
 特例を適用する
 調査通知前にされたものである場合に
 限り、過少申告加算税等の特例を適用
 する

   ② 適用開始時期
     ・提出義務者、提出期限、記載事項に関しては令和 5 年分の財産債務調書から適用されます。
     ・宥恕規定の見直しについては令和 6 年 1 月 1 日以後に提出される財産債務調書から適用されます。

   ③ 実務上の留意点
     a.提出期限の 6 月 30 日を過ぎて調査の通知があった後に提出されたものは、期限後に提出されたも
       のとして、過少申告加算税に影響を与えますので、期限を守るようにしてください。

     b.所得が 2,000 万円以下であったため従来は財務債務調書の提出対象にならなかった者についても
       改正後は、保有する財産の価額によっては財産債務調書の提出対象に該当することとなります。
       そのため、財産を把握し、10 億円以上であるかどうかの判定をすることが必要となってきます。

     c.財産債務調書制度は、富裕層と低所得者層の税制面での不公平感を緩和することが狙いとされて
       おり、最近では財産債務調書だけを調査するという事例も出てきています。
       (財産債務調書については、税務職員等に対して質問検査権が付与されています。)
       提出期限が延期されることによって作成する時間を確保できるようになるので、提出対象に該当
       するかどうかの判定及び該当する場合は正確に作成することが求められます。

  (7) 住宅ローン控除の申告手続等の簡素化
   ① 住宅ローン控除の適用に必要な年末残高証明書について、納税者による提出が不要となります。

   ② 居住年が令和 5 年以後である者が、令和 6 年 1 月 1 日以後に行う確定申告及び年末調整について適用
    されます。

  (8) 子会社配当に係る事務簡素化
   ① 100%子法人からの配当及び直接保有の持株割合が 1/3 超である内国法人からの配当等で一定の要件を
    満たす場合源泉徴収が不要となります。

   ② 令和 5 年 10 月 1 日以後に支払を受けるべき配当等について適用されます。

  (9) 所得税の納税地の異動・変更手続の簡素化
   ① 所得税の納税地を変更する場合の届出書の提出が不要となります(個人事業者における消費税も同様)。

   ② 令和 5 年 1 月 1 日以後の納税地の変更等について適用されます。

  (10) 社会保険料控除証明書等の電子化
   ① 年末調整又は確定申告で社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除を適用する際において、控除証明
    書を電子データにより提供することが可能となります。

   ② 年末調整手続については、令和 4 年 10 月 1 日以後に保険料控除申告書を提出する場合に適用し、確定
    申告手続については、令和 4 年分以後の確定申告書を提出する場合に適用します。

  (11) 平成 21・22 取得土地等の 1,000 万円控除
     平成 21 年 1 月 1 日から平成 22 年 12 月 31 日までの間に取得した国内の土地又は土地の上に存する
     権利を譲渡する際、譲渡年の 1 月 1 日において所有期間が 5 年を超える等の要件を満たしていれば、
     その土地等の長期譲渡所得の金額から 1,000 万円を控除できます。
      法人税においても同様の特例が設けられています。特例適用の検討を失念しないよう、土地等の譲渡
     があった場合は、その取得年を確認された方が良いです。